人気RPGシリーズ「ウィッチャー」の最新作、コードネーム「ポラリス」(通称:ウィッチャー4)が、開発エンジンをこれまでの自社製「REDengine」からEpic Gamesの「Unreal Engine 5(UE5)」へ移行するというニュースはもうご存知だと思います。
この決断は、開発元であるCD PROJEKT REDの未来、そして私たちが体験する次世代のウィッチャーの世界に、どのような影響をもたらすのでしょうか。
本記事では、エンジン変更の背景、両エンジンの特徴比較、そしてファンたちの期待と不安の声までを深掘りしていきます。
なぜ今、自社エンジンを捨てるのか?エンジン移行の背景

CDPRはこれまで、「ウィッチャー2」「ウィッチャー3 ワイルドハント」、そして「サイバーパンク2077」といった大作を、自社開発の「REDengine」で作り上げてきました。特に、広大で物語性の高いオープンワールドRPGを作るために最適化されたこのエンジンは、CDPRの代名詞とも言える存在でした。
しかし、「サイバーパンク2077」の開発とリリースにおいて、REDengineはいくつかの課題を露呈しました。
😟技術的負債と複雑化
長年の開発でエンジンは巨大かつ複雑になり、新しい開発者が習得するのに時間がかかるようになりました。
😟マルチプラットフォーム対応の困難さ
特に旧世代機への最適化に苦戦し、リリース当初のパフォーマンス問題の一因となりました。
😟開発リソースの分散
ゲームコンテンツの開発と並行して、エンジン自体の開発・維持にも多大なリソースを割く必要がありました。
これらの課題を踏まえ、CDPRはEpic Gamesとの長期的な戦略的パートナーシップを締結。エンジン開発をその道のプロフェッショナルであるEpicに任せ、自らは「最高のゲーム体験を創造する」という本来の役割にリソースを集中させる道を選んだのです。
REDengine vs Unreal Engine 5 特徴比較

では、具体的に2つのエンジンは何が違うのでしょうか。それぞれの長所と短所を比較してみましょう。
特徴 | REDengine | Unreal Engine 5 |
---|---|---|
開発元 | CD PROJEKT RED (自社開発) | Epic Games (汎用エンジン) |
長所 | ・特定のゲーム(物語主導のオープンワールド)に完全特化 ・開発パイプラインとの深い連携 ・独自の「味」や表現が可能 | ・最高峰のグラフィック技術(Nanite, Lumen) ・巨大な開発者コミュニティと豊富な人材 ・安定性と高い生産性 ・優れたマルチプラットフォーム対応 |
短所 | ・学習コストが高い ・維持・開発コストがかかる ・技術的な問題が発生すると自社で解決するしかない | ・ライセンス料が発生する ・汎用エンジンゆえの「没個性」を懸念する声も ・エンジンに合わせた開発スタイルへの適応が必要 |
REDengineが「熟練の職人が作り上げたオーダーメイドの工具」だとすれば、UE5は「世界最高峰の性能を持つ、拡張性の高い最新鋭の万能工作機械」と言えるかもしれません。
最終的にUnreal Engine 5がウィッチャー4にピッタリな理由
今回のエンジン変更は、次世代のウィッチャーにとって最適な選択だと考えられます。その理由は主に3つあります。
「創造」への集中

エンジン開発という重責から解放されることで、CDPRはシナリオ、キャラクター、クエスト、そして世界観の構築といった、彼らが最も得意とする分野に全ての情熱とリソースを注ぎ込めます。
次世代オープンワールドの実現

UE5のコア技術である「Nanite」と「Lumen」は、オープンワールドゲームに革命をもたらします。
- Nanite(ナナイト)
映画品質の超高精細な3Dモデルを、パフォーマンスの低下を気にすることなく無限に配置できる技術。これにより、圧倒的なディテールで描かれた自然環境や建築物が実現します。 - Lumen(ルーメン)
光の反射や屈折をリアルタイムに計算する動的なグローバルイルミネーションシステム。洞窟に差し込む光、森の木漏れ日、松明の灯りが照らし出す石壁など、ウィッチャーの世界に欠かせない「光と影」の表現が、かつてないレベルでリアルになります。
これらの技術は、ダークで美しいウィッチャーの世界を、これまで以上に没入感のあるものへと昇華させるでしょう。
開発の安定性と効率化

世界中で多くの開発者が使用しているUE5は、豊富な知識やドキュメントが存在し、優秀な人材を確保しやすいという利点があります。
これにより、開発プロセスがよりスムーズに進み、「サイバーパンク2077」で経験したような技術的な問題を未然に防ぎ、より洗練された状態でゲームをリリースできる可能性が高まります。
待ちわびるファンたちの声
この歴史的な変更について、ファンからは期待と少しの不安が入り混じった声が上がっています。
期待の声

UE5のデモ映像を見るだけでワクワクする。あのクオリティでウィッチャーの世界を冒険できるなんて最高!

サイバーパンクの二の舞は避けてほしいから、安定性の高いUE5への移行は賢明な判断だと思う。

エンジン開発から解放されたCDPRが、物語作りに全力を注いだら、とんでもない傑作が生まれそう。
不安の声

REDengine特有の、あの少し不器用だけど味のある雰囲気が好きだった。UE5になったら、よくある綺麗なだけのゲームにならないか心配。

どのゲームもUE5製になると、グラフィックの個性がなくなりそうで少し怖い。
全体的には、CDPRの物語と世界を構築する力への信頼は揺らいでおらず、技術的な基盤が安定することへの期待が上回っているようです。
まとめ

CDPRが「ウィッチャー4」で下したUnreal Engine 5への移行という決断は、単なる技術的な変更ではありません。それは、過去の挑戦から学び、自社の強みを最大限に活かし、次世代のゲーマーに最高の体験を届けるための、未来に向けた戦略的な一手です。
REDengineが築き上げた伝説に敬意を払いつつ、UE5という新たな翼を得た次世代のウィッチャーが、どのような驚きと感動を私たちに与えてくれるのか。今はただ、続報を心待ちにするばかりです。
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