ふん、最近の若いウィッチャーどもは、剣の振り方ばかり気にして、肝心なことを忘れがちだ。真のウィッチャーの力は、腕力じゃねえ。知識だ。
これから俺が、お前たちのような若造にも分かるように、最もありふれていながら、それゆえに最も多くのウィッチャーの命を奪ってきた怪物――屍鬼について講釈してやろう。
耳の穴かっぽじってよく聞け。
ヴェセミルの怪物手引書:腐肉を漁る者ども、屍鬼について

屍鬼なぞ、ドラゴンやグリフィンに比べれば児戯に等しいと思うか? その傲慢さが命取りになるんだ。
奴らはな、人間の愚かさそのものを糧にして増える。戦争、疫病、飢饉…人間が死体をそこらにばらまけば、そこが奴らの饗宴の場となる。つまり、屍鬼の数が増えたなら、それは人の世が腐り始めている証拠でもあるんだ。
奴らを狩ることは、俺たちが人間の尻拭いをしているようなもんだ。さて、感傷はここまでだ。ここからは実用的な話をする。
屍鬼(Necrophages)とは何か?

奴らは死肉や汚物を喰らう怪物の総称だ。多くは群れで行動し、腐臭を撒き散らしながら、墓地や戦場跡をうろついている。共通の弱点は火。
イグニの印は、どんな屍鬼に対しても有効な切り札だと思っていい。そして、剣に屍鬼のオイルを塗るのを忘れるな。準備を怠る奴から、墓石の下に転がる羽目になる。
「謝るだけじゃダメだ…全部読め」6。怪物図鑑は飾りじゃない。そこに書かれている一言一句が、お前たちの命綱になるんだ。
主な屍鬼の種類と対処法
一口に屍鬼と言っても、種類によって癖が違う。相手を知り、己を知れば、百戦危うからずだ。
グール (Ghoul) & アルグール (Alghoul)

⚔️特徴
最もよく見かける屍鬼だな。戦場跡や墓場には必ずと言っていいほど群れで現れる。腐肉を好むが、生きた人間にも容赦なく襲いかかってくるぞ 8。
⚔️戦闘の要点
奴らは数で押してくる。囲まれないよう、常に動き回れ。アルグールはグールの上位種で、怒ると背中から骨の棘を突き出してくる厄介なやつだ。この状態の奴に剣を振っても弾かれるだけ。
アクスィーの印で動きを止めるか、棘を引っ込めるまで待つんだな。
ドラウナー (Drowner)

⚔️特徴
湖や川、沼といった水辺に潜む卑劣な怪物だ。水の中にいる獲物を引きずり込んで溺死させるのが得意技でな。「溺死者の亡霊だ」などというくだらん迷信があるが、あれはただの俗説だ。解剖すりゃ分かるが、奴らにはちゃんとエラがある。
⚔️戦闘の要点
奴らはとにかく火に弱い。イグニの印一発で面白いように燃え上がるから、覚えておけ。水辺での戦いは奴らの土俵だ。できるだけ陸地に誘い込んでから始末するのが賢明だな。
ウォーター・ハグ (Water Hag) & グレイブ・ハグ (Grave Hag)

⚔️特徴
屍鬼の中でも特に狡猾な「鬼婆」どもだ。ウォーター・ハグは泥を投げつけて目くらましをしてくるし、グレイブ・ハグは墓場を縄張りにして、その長い舌を鞭のようにしならせて攻撃してくる。
⚔️戦闘の要点
小賢しい戦術を使う相手には、こちらも工夫が必要だ。ウォーター・ハグの泥玉は横にかわせ。グレイブ・ハグの舌の攻撃範囲を見切るんだ。奴らにはイャーデンの印も有効だぞ。動きを鈍らせて、懐に飛び込んで斬り刻んでやれ。
ロットフィーンド (Rotfiend)

⚔️特徴
腐敗して膨れ上がった死体そのもの、といった外見の胸糞悪い怪物だ。こいつの最大の特徴であり、最も危険な点は、死に際に自爆することだ。
⚔️戦闘の要点
ゲラルト、お前も昔これでヒヤリとしたことがあったな。ロットフィーンドに止めを刺す時は、必ず距離を取れ。爆発に巻き込まれたら、お前も腐肉の仲間入りだ。クエンの印で盾を張っておくのもいい手だ。
フォグレット (Foglet)

⚔️特徴
濃霧に紛れて姿を隠し、獲物を狩る、実に陰湿な怪物だ。幻影を見せて惑わしたり、実体を消して攻撃をかわしたりもする。
⚔️戦闘の要点
霧の中でこいつと戦うのは骨が折れる。姿が見えない敵には、月の粉の爆薬が何よりの霊薬だ。あれを撒けば、奴らは強制的に実体を現す。霧が晴れたら、あとはお前たちの腕次第だ。
屍鬼との戦いは、過去との戦いだ

ケィア・モルヘンの悲劇の後、俺は生き残ったガキども…ゲラルトやエスケル、ランバートを育ててきた。俺が叩き込んだのは、剣の技術だけじゃない。伝統と規律、そして何よりも「知ること」の重要性だ。
屍鬼が蔓延る戦場跡で依頼をこなすたびに思い出せ。奴らは、俺たちウィッチャーがかつて犯した過ちの、あるいは人間社会そのものが抱える病の、忌まわしい副産物だということを。
奴らを狩ることは、ただ金を稼ぐためじゃない。俺たちが守ると誓ったこの世界から、ほんの少しでも苦しみを取り除いてやるための、終わりのない贖罪のようなもんだ。

いいか、若いの。怪物図鑑を読み込み、オイルを塗り、印を準備しろ。そして何より、目の前の怪物がなぜそこにいるのか、考えろ。
それができなきゃ、お前はただの剣客だ。ウィッチャーにはなれん。…さあ、講釈は終わりだ。訓練に戻れ。
「できるまでだ」
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