現在『ウィッチャー4』の開発を鋭意進めているCD Projekt Red(以下、CDPR)から、これからのゲーム作りを左右する重要なニュースが発表されました。
同社は新たな「AIディレクター」として、ドリアン・キーケン(Dorian Kieken)氏を迎え入れました。

彼は単なる技術者ではありません。『Mass Effect』シリーズなどで知られるBioWare出身のベテラン開発者であり、同時にAI技術の会社を自ら立ち上げた起業家でもあります。
今回は、この異色の経歴を持つ人物がリーダーになることで、私たちの待つ新作RPGがどう面白くなるのか、そしてなぜ今のCDPRに彼が必要だったのかを分かりやすく解説します。
ゲーム開発と最先端AI、二つの武器を持つ男
今回就任したドリアン・キーケン氏のキャリアは、大きく2つの章に分かれています。
前半:名作RPGの現場を知る「ゲームクリエイター」

最初の約8年間は、RPGの名門BioWareに在籍していました。『Mass Effect 2』や『Mass Effect 3』といった世界的に評価されたタイトルの開発に参加し、開発ディレクターやプロデューサーとして「どうすればプレイヤーが物語に没入できるか」を追求してきました。
後半:未来の技術を作る「AI起業家」

しかし彼はその後、ゲーム業界を離れてAIスタートアップ「AI Redefined」を設立します。ここでの約8年間は、人間とAIが協力して複雑なタスクを行うためのシステム構築に没頭しました。
つまり彼は、「昔ながらの熱いゲーム作り」と「最先端のクールなAI技術」の両方を、最高レベルで経験しているハイブリッドな人材なのです。単に昔の実績があるだけでなく、ゲーム開発の限界を感じて新しい技術へ飛び込んだ「革新者」としての側面も見逃せません。
なぜCDPRには彼が必要だったのか:バグのない世界へ
CDPRといえば、『ウィッチャー3』のような圧倒的な世界観構築が魅力ですが、一方で記憶に新しいのが『サイバーパンク2077』発売当初の不具合(バグ)の問題です。近年の超大作ゲームはあまりに複雑になりすぎて、人間の手だけでは管理しきれないのが実情です。
ここで期待されるのが、キーケン氏の「AIシミュレーション」の知見です。

彼が設立した会社では、産業向けに「AIを使ったシミュレーション訓練」を行っていました。これをゲームに応用すると、「何千ものAIプレイヤーに24時間ゲームをテストプレイさせる」といったことが可能になります。
人間が見逃してしまうようなバグや進行不能なトラブルを、AIが発売前に見つけ出して報告してくれる。彼が加わることで、次回の新作は「発売日から安心して遊べるクオリティ」になることが、実は一番のメリットかもしれません。
ウィッチャー4はどう進化する?(期待と予想)
もちろん、裏方の品質管理だけではありません。ゲームの中身もワクワクするような進化が期待できそうです。
例えば、街の住人(NPC)たち。これまでは決まったセリフを話すだけでしたが、AIが導入されれば、プレイヤーの行動や世界の状況に合わせて、まるで生きている人間のように反応を変えるかもしれません。

また、敵との戦闘も進化するでしょう。プレイヤーの戦い方のクセをAIが学習し、「このプレイヤーは魔法を多用するから、魔法対策をしてこよう」といった戦術を練ってくる賢い敵が現れる可能性があります。
単に映像が綺麗になるだけでなく、「敵や住人が本当にそこで生活し、考えている」と感じられるような没入感が生まれることでしょう。
CDPRのAIに対するスタンスの変化

CDPRはこれまで、AIの使用に対して「あくまで人間のクリエイターを補助する道具」という慎重な姿勢を見せていました。
しかし今回の人事は、そのスタンスが一歩前進したことを示しています。それは「人間の仕事を奪うため」ではなく、「人間だけでは作れない規模のゲームを実現するため」へのシフトです。
面倒なテストプレイや、膨大な数の背景キャラクターの制御をAIに任せることで、人間のクリエイターは「感動的なクエスト」や「魅力的なキャラクターデザイン」といった、人間にしかできない仕事に集中できるようになるはずです。
まとめ
ドリアン・キーケン氏の就任は、単なる技術スタッフの採用ではありません。「BioWare仕込みの物語へのこだわり」と「最新AIによる品質とリアリティの向上」を両立させるための重要な一手です。
『ウィッチャー4』では、これまでのシリーズが持っていた魅力はそのままに、より賢く、より不具合の少ない、快適で没入感のある冒険が楽しめることを期待して待ちましょう。

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