注意:本記事は、イベントで公開された『The Witcher 3: Wild Hunt — Songs of the Past』序盤デモの内容に触れます。製品版の大きな展開や結末に関する情報は含みません。
『Songs of the Past(追憶の調べ)』は、ゲラルトをもう一度旅へ連れ出すだけの懐古的な追加章ではなさそうです。
11月2日に公開された開発者への直接取材から見えてきたのは、これまで陽気な相棒として描かれることが多かったダンディリオンを、家族、故郷、過去から見直す物語でした。
舞台は新地域レッテン。牧歌的な景色の下に暗い秘密を隠す土地で、ゲラルトは親友の知られざる顔へ近づいていきます。
すでに公表されていた地域設定に、今回は人物の動機と家族関係が加わりました。新しい土地の観光案内ではなく、ダンディリオンという人物を理解するための舞台としてレッテンを見ることができます。
公式が示したレッテンの二つの顔
CD PROJEKT REDは8月の公式発表で、レッテンを「農村の伝統が息づく牧歌的な土地であり、表面のすぐ下に暗い秘密を隠している」と紹介しました。美しい田園と不穏な伝承が同居する構図は、華やかなトゥサンとも、戦争で荒れたヴェレンとも違います。
Witcher3の Songs of the Past は2027年にPC、PlayStation 5、Xbox Series X|S向けに発売予定です。公式発表で確定しているのは年単位の予定までで、具体的な発売日はまだ示されていません。
Fool’s Theoryとの共同開発で、ゲラルトが主人公として戻ることも発表済みです。
今回の新しさは、地域名や発売年ではなく、Lucca Comics & Gamesで披露されたデモと、開発陣が語った物語の焦点にあります。
悪夢から始まるダンディリオン捜索

CGMagazineの取材によると、公開デモはレッテンの祭り「ベルテイン」の翌朝から始まります。
ゲラルトは祝いの後らしい伝統衣装のまま目を覚ましますが、気分のよい朝とはいきません。井戸、茨、スミレの香り、そして叫ぶダンディリオンが現れる不穏な夢を見ていたからです。
ゲラルトが向かうのは、ダンディリオンの一族が暮らす屋敷です。そこで従妹のリラは彼が行方不明だと訴えますが、祖母は深刻に受け取りません。
夢の内容と一族に伝わる「茨の庭」の話が重なり、ゲラルトとリラは井戸を探しに出ます。

ここで興味深いのは、事件が世界の命運ではなく、親友の家庭内にある古い記憶から始まることです。ゲラルトは怪物退治の専門家であると同時に、ダンディリオンを長く知る友人でもあります。その関係が、呪いの調査と人物の掘り下げを一つにつなぎます。
「道化役」では終わらない吟遊詩人

ダンディリオンの本名はジュリアン・アルフレッド・パンクラッツ、レッテンホーヴェ子爵です。ゲームでは女好きで騒動を呼ぶ吟遊詩人として笑いを担う場面が多い一方、原作では知性、弁舌、忠誠心を備え、ゲラルトの人生を記録する重要な人物でもあります。
リードライターのPaula Mejsner氏は取材で、ゲームはこれまで彼の魅力を十分に描き切れていなかったという問題意識を示しています。
Songs of the Past では故郷、家族、幼なじみを登場させ、現在のダンディリオンになる前の姿を見せたいと説明しました。
これは単なる「意外な過去」の追加ではありません。なぜ彼が故郷を離れ、宮廷詩人や旅人として生き、危険を承知でゲラルトに付き合うのか。
そこへ家族の目線を加えることで、長年親しんだ人物の行動を別の角度から読み直せます。
レッテンの生活感が物語を支える

開発陣は、レッテンの風景にポーランド南部とイングランドの田園から着想を得たと説明しています。祭りの翌朝に住民が日常へ戻っていく様子や、家族の屋敷、地域の伝承を通じて、土地そのものを一つの共同体として見せる狙いです。
『ウィッチャー3』の強みは、依頼書に書かれた怪物より先に、その土地で暮らす人々の欲望や嘘が見えてくることでした。レッテンでも、穏やかな表面と「茨の庭」にまつわる不穏さの落差が、怪物の正体以上に重要になりそうです。
ただし、公開デモは序盤の一部です。夢の意味、井戸の正体、ダンディリオンの身に何が起きたのかは、現時点で確定した結論として語れません。公式が示したのは、彼の家族と過去が物語の中心にあることまでです。
ゲラルト最後の旅にふさわしい距離感
世界を救う使命ではなく、親友のために古い土地へ向かう。『Songs of the Past』の導入は、長い旅を続けてきたゲラルトに似合う、個人的な距離感を持っています。
そして今回、光が当たるのはゲラルトだけではありません。ダンディリオンを「面白い相棒」から一人の人間へ戻し、その故郷が隠してきたものをたどる物語です。
レッテンの暗い秘密が何であれ、最大の発見は、十年以上知っているつもりだった吟遊詩人の新しい顔なのかもしれません。

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