【Witcher4】CDPRインタビュー『サイバーパンク2077』の悲劇をどう乗り越えるのか。【2026年5月】

DegitalDragons ウィッチャー4

2026年5月17日から19日にかけて、ポーランドのクラクフで開催された欧州有数のゲーム開発者向けカンファレンス「Digital Dragons 2026」にて、CD Projekt Red(以下、CDPR)のテクニカルライターであるヤロスワフ・ルチンスキ氏エイドリアン・フルネチェク氏が登壇しました。

彼らは『ウィッチャー3』『サイバーパンク2077』の開発現場で何が起きていたのか、そして現在開発中の『ウィッチャー4』『サイバーパンク2』に向けてどのような組織改革を行っているのかを赤裸々に語りました。

本記事では、パネルディスカッションの内容をインタビュー形式に再構成し、そこから見えてくるCDPRの「本気度」と、いちファンとして抱く期待、そして少しの不安について紐解いていきます。

インタビュー:8,000ページの迷宮と「完了の定義」

サイバーパンク2077
インタビュアー
インタビュアー

『サイバーパンク2077』のローンチは、ゲーム史に残る混乱を招きました。当時の開発現場における最大の技術的な障壁は何だったのでしょうか。

ルチンスキ氏
ルチンスキ氏

振り返ってみると、最大の見落としは、開発における技術的な知見がドキュメントとして適切に保存・共有されていなかったことでした。

これが後々、とてつもなく大きなハードルとなって私たちに跳ね返ってきたのです。

フルネチェク氏
フルネチェク氏

『サイバーパンク2077』の開発ピーク時には、チーム内に8,000ページを超える膨大な技術ドキュメントが存在していました。

しかし、これほど巨大なドキュメント群を維持し、常に最新の状態に更新し続けるには、天文学的な時間と労力が必要でした。結果として、ドキュメントの更新作業は開発の中で優先順位がどんどん下がってしまったのです。

インタビュアー
インタビュアー

ドキュメントが形骸化した結果、どのような影響が出たのでしょうか。

ルチンスキ氏
ルチンスキ氏

あるチームが直面したバグや、それを解決するためのブレイクスルーが、他のチームに伝わらなくなりました。

それぞれの部署が孤立して作業を進める状態に陥り、ゲーム全体としての最適化や擦り合わせが機能しなくなってしまったのです。

インタビュアー
インタビュアー

その手痛い教訓から、現在はどのような対策を講じているのですか。

フルネチェク氏
フルネチェク氏

私たちはその課題から多くを学び、二度と同じ過ちを繰り返さないためのプロセスを構築しました。現在は大きく二つのアプローチをとっています。

一つ目は、社内全体でのドキュメント共有を徹底し、全員がプロジェクトの全体像と技術的進捗を把握できるループを作ることです。

二つ目は、ドキュメントの維持管理をいかなる理由があろうとも妥協しない「絶対条件」としたことです。

インタビュアー
インタビュアー

開発のスピードよりも、情報の共有と品質担保を優先するということですね。

フルネチェク氏
フルネチェク氏

その通りです。さらに言えば、私たちは社内における「完了の定義」そのものを変更しました。

単に機能が動けば終わりではなく、ドキュメントが整備され、他チームがその恩恵を受けられる仕組みに落とし込まれて初めて「タスク完了」とみなすように新しいメカニズムを導入しています。

未来は非常に有望に見えます。私たちは教訓をしっかりと学んだのです。

いちファンとして読み解く、CDPRの「本気度」と少しの不安

カンファレンス

ここからは、今回のカンファレンスで語られた内容をベースに、今後のCDPRタイトルがどう変わっていくのか、ファン目線でじっくり考察してみたいと思います。

8,000ページの手引書と、自社エンジンからの卒業

8000ページ

「8,000ページの開発ドキュメントが放置されてしまった」という話を聞いて、みなさんはどう思いましたか?私は「そりゃそうなるよな」と妙に納得してしまいました。

これまでCDPRは「REDengine」という自社エンジンを使ってゲームを作ってきました。自社製ですから、使い方も、バグの直し方も、新機能の追加も、すべて自分たちで一から説明書(ドキュメント)を書かなければなりません。

サイバーパンク2077のような超巨大なゲームを作りながら、日々進化するエンジンの説明書を数千ページも更新し続けるなんて、どう考えても人間業ではありません。

大英断

だからこそ、次回作である『ウィッチャー4』『サイバーパンク2』から、世界標準であるUnreal Engine 5に乗り換えたのは、大英断だったと思います。UE5なら、世界中のクリエイターが使い方を共有していますし、公式の分厚いサポートもあります。

開発チームは「エンジンの説明書を書くこと」から解放され、「純粋に面白いゲームを作ること」に全力を注げるようになるわけです。今回語られた「ドキュメント管理の徹底」も、このエンジン移行があったからこそ実現できる約束なのだと思います。

胸が熱くなった「完了の定義」の変更

バグ

今回のインタビューで個人的に一番グッときたのは、「完了の定義を変更した」という言葉でした。

サイバーパンク2077の発売日、期待に胸を膨らませてプレイを始め、進行不能バグやクラッシュに泣かされた記憶は、私たちファンの中にまだ生々しく残っています。

当時はおそらく「とりあえず動くから、これでタスク完了!」として、株主が求める発売日に無理やり間に合わせた部分があったのでしょう。

カンバン方式

そこを見直し、「他チームと連携できる状態になって、初めて完了とみなす」という厳しいルールを敷いたこと。これは「もう絶対に未完成のまま世には出さない」という、クリエイターとしての強烈な決意表明に聞こえます。

また、北米に新たな開発拠点を立ち上げたことも、過去の過酷な長時間労働から抜け出し、健全な環境で最高傑作を作ろうとする本気の表れだと感じます。

拭いきれない「寂しさ」と「待ち遠しさ」

待ち遠しさ

とはいえ、ファンだからこそ抱いてしまう不安や寂しさがあるのも正直なところです。

UE5という超優秀なエンジンを使うことで、確かにバグは減り、開発はスムーズになるでしょう。

でも、REDengineが作り出したあの「ナイトシティ」のむせ返るような空気感、少しピーキーだけど唯一無二だったあの「CDPRらしさ」は失われないだろうか?という一抹の不安があります。

どこかで見たことのあるような、綺麗にまとまっただけの優等生的なゲームにはなってほしくない、と願ってしまいます。

そしてもう一つは、発売がいつになるのかという問題です。「絶対に妥協しない体制」を作ったということは、それだけ時間がかかるということ。『ウィッチャー4』はおそらく2027年代後半以降、『サイバーパンク2』に至っては2030年代に突入するかもしれません。

それでも私は、中途半端なものを早く遊ぶより、何年待ってでも歴史に名を刻むようなマスターピースを遊びたいです。失敗から目を背けず、根本から生まれ変わろうとしているCDPRの新たな挑戦を、いちファンとして気長に、そして熱く応援し続けたいと思います。

コメント